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イギリスで、日本の伝統的な楽器である津軽三味線を弾いている方がいる…。そんな話を聞いて、ぜひインタビューを!と思い訪ねたのは、一川響(いちかわ ひびき)さん。
20歳で三味線を始め、30歳の頃に渡英され、現在はイギリスでコンサートや三味線のレッスンを行っている。最近ではイギリス国外からも声がかかり、活躍の幅をどんどんと広げていると言う。今回はそんな一川さんがレッスンをされているご自宅にお邪魔し、三味線と出会ったきっかけから将来の夢、そして日本文化と海外文化の違いまで様々なことをお伺いした。
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<プロフィール>
一川響
石川県金沢市出身、ロンドン在住。22歳で津軽三味線「明宏会」に入門。2011年2月に来英。14年には「Exceptional Talent Visa」を取得。英国はもとより、近年では欧州各地でのコンサートの企画・出演も多数行っている。ロンドンを中心に三味線の演奏指導なども行い、三味線の普及活動に奔走中。ロンドン地下鉄でのバスキング(路上演奏)のライセンス保持者。www.hibikishamisen.com
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- 三味線との出会いについて
一川さんは学生の頃、もともとギターを弾いていたバンドマンだった。20歳の時、「ギター以外の他の楽器もやってみたい」と思うようになり、たまたま下北沢で見つけた看板に、三味線教室の広告を見つける。それを見て「1年間だけこの楽器をやってみよう」と思い立ったことがきっかけだった。
この時始めたのが、「細棹(ほそざお)」の三味線。一川さんが現在使用している「太棹(ふとざお)」の津軽三味線よりも棹が細く、音色も繊細な楽器だ。太棹の三味線は、「ベンベン」という感じの、力強くて空気を鋭く割くような音色。吉田兄弟が勢い良く演奏するあの三味線の音を思い出してもらえれば分かるかと思う。
当時、細棹を習っていた一川さんが太棹の津軽三味線に出会ったのも、偶然が重なってのことだった。ある日、稽古に行く途中にワイシャツをクリーニングに出しに行った時、クリーニング屋のおばちゃんが話かけてきたとか。「君、それ三味線じゃないの?」なんと、そのおばちゃんも三味線をやっていると言うのだ。しかも彼女の場合は津軽三味線を習っていたらしく、これをきっかけに津軽三味線の稽古場に行かせてもらえることになった。
この時、初めて津軽三味線の音色を聴いた一川さんに、「電撃が走った」。力強く迫力のある音色に衝撃を受け、「かっこいい!」と感激した彼は、一気に津軽三味線の魅力に惹かれ、稽古をつけてもらうことに。もしこの津軽三味線の音色に出会わなければ、ここまで三味線を続けることは無かったかもしれないと言うほど、一川さんにとって衝撃の出会いだった。
- ポーランドでの公演をきっかけに、海外での演奏に興味を持つ
津軽三味線の魅力に虜にされ、稽古を始めた一川さん。その当時は、「自分が海外に住むなんて全然想像していなかった」。そんな彼がイギリスで演奏するまでに、どんな経緯があったのだろうか?
2007年、一川さんと彼の師匠は、共にポーランドで演奏する機会があった。初めての海外公演だったが、その時のコンサートが非常に盛り上がったという。予想以上の盛り上がりを見せてくれたオーディエンスを見て、「海外で演奏するのって面白いな」と感じた。その時初めて、海外での三味線演奏を視野に入れるようになり、この頃から英語も力を入れて勉強するようになったのだ。
そして2011年、三味線を始める前からイギリスのロックやファッションが好きだったということから、ワーキングホリデーを使って2年間イギリスに滞在することに。イギリスでの三味線生活が始まった。
- イギリス生活で感じる、文化の違い
イギリスで三味線のレッスンをするに当たり、最初はやはり文化の違いを感じたと言う。英語を使って楽器の演奏方法を1から教えるのには苦労した。それでも、英語でレッスンすることもすぐに慣れた。むしろ、海外と日本の文化の違いは、自分が活動する上で強みになっているという。
- 文化の違いが強みになる
一川さんは、様々なイベントやコンサートでの演奏の他、ワークショップや、個人レッスンなどを行われている。レッスンの生徒が増えるきっかけは、コンサートが多い。「あなたのパフォーマンスを観て感動しました」と、レッスンを申し込んで来る人は少なくないと言う。他にも、演奏を聴いていたイベントのオーガナイザーが「今度、自分のイベントで演奏をしてくれないか」と依頼しに来ることもある。言語や文化の違いはあれど、彼の魂の込もった津軽三味線を聴いて、強く動かされる人は大勢いる。
最近では、イギリスのサウスロンドンにあるパブで演奏を頼まれた。行ってみると、驚くべきことに他の演奏グループはほとんどロックバンドだった。あまりのジャンルや客層の違いに「自分たちの演奏は受け入れてもらえるのか」と不安になった一川さんたち。しかし、いざパフォーマンスを始めてみると、聴いたことのない音楽にどんどんと聴衆が集まって来た。そして最後には大勢の人が自分の呼びかけに応じて手拍子をしてくれる等、ライブは大成功に終わったと言う。文化の違いがあるからこそ、一川さんの演奏はより一層海外で輝くことができたのだ。
イギリスで、日本の伝統的な楽器である津軽三味線を弾いている方がいる…。そんな話を聞いて、ぜひインタビューを!と思い訪ねたのは、一川響(いちかわ ひびき)さん。
20歳で三味線を始め、30歳の頃に渡英され、現在はイギリスでコンサートや三味線のレッスンを行っている。最近ではイギリス国外からも声がかかり、活躍の幅をどんどんと広げていると言う。今回はそんな一川さんがレッスンをされているご自宅にお邪魔し、三味線と出会ったきっかけから将来の夢、そして日本文化と海外文化の違いまで様々なことをお伺いした。
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<プロフィール>
一川響
石川県金沢市出身、ロンドン在住。22歳で津軽三味線「明宏会」に入門。2011年2月に来英。14年には「Exceptional Talent Visa」を取得。英国はもとより、近年では欧州各地でのコンサートの企画・出演も多数行っている。ロンドンを中心に三味線の演奏指導なども行い、三味線の普及活動に奔走中。ロンドン地下鉄でのバスキング(路上演奏)のライセンス保持者。www.hibikishamisen.com
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- 三味線との出会いについて
一川さんは学生の頃、もともとギターを弾いていたバンドマンだった。20歳の時、「ギター以外の他の楽器もやってみたい」と思うようになり、たまたま下北沢で見つけた看板に、三味線教室の広告を見つける。それを見て「1年間だけこの楽器をやってみよう」と思い立ったことがきっかけだった。
この時始めたのが、「細棹(ほそざお)」の三味線。一川さんが現在使用している「太棹(ふとざお)」の津軽三味線よりも棹が細く、音色も繊細な楽器だ。太棹の三味線は、「ベンベン」という感じの、力強くて空気を鋭く割くような音色。吉田兄弟が勢い良く演奏するあの三味線の音を思い出してもらえれば分かるかと思う。
当時、細棹を習っていた一川さんが太棹の津軽三味線に出会ったのも、偶然が重なってのことだった。ある日、稽古に行く途中にワイシャツをクリーニングに出しに行った時、クリーニング屋のおばちゃんが話かけてきたとか。「君、それ三味線じゃないの?」なんと、そのおばちゃんも三味線をやっていると言うのだ。しかも彼女の場合は津軽三味線を習っていたらしく、これをきっかけに津軽三味線の稽古場に行かせてもらえることになった。
この時、初めて津軽三味線の音色を聴いた一川さんに、「電撃が走った」。力強く迫力のある音色に衝撃を受け、「かっこいい!」と感激した彼は、一気に津軽三味線の魅力に惹かれ、稽古をつけてもらうことに。もしこの津軽三味線の音色に出会わなければ、ここまで三味線を続けることは無かったかもしれないと言うほど、一川さんにとって衝撃の出会いだった。
- ポーランドでの公演をきっかけに、海外での演奏に興味を持つ
津軽三味線の魅力に虜にされ、稽古を始めた一川さん。その当時は、「自分が海外に住むなんて全然想像していなかった」。そんな彼がイギリスで演奏するまでに、どんな経緯があったのだろうか?
2007年、一川さんと彼の師匠は、共にポーランドで演奏する機会があった。初めての海外公演だったが、その時のコンサートが非常に盛り上がったという。予想以上の盛り上がりを見せてくれたオーディエンスを見て、「海外で演奏するのって面白いな」と感じた。その時初めて、海外での三味線演奏を視野に入れるようになり、この頃から英語も力を入れて勉強するようになったのだ。
そして2011年、三味線を始める前からイギリスのロックやファッションが好きだったということから、ワーキングホリデーを使って2年間イギリスに滞在することに。イギリスでの三味線生活が始まった。
- イギリス生活で感じる、文化の違い
イギリスで三味線のレッスンをするに当たり、最初はやはり文化の違いを感じたと言う。英語を使って楽器の演奏方法を1から教えるのには苦労した。それでも、英語でレッスンすることもすぐに慣れた。むしろ、海外と日本の文化の違いは、自分が活動する上で強みになっているという。
- 文化の違いが強みになる
一川さんは、様々なイベントやコンサートでの演奏の他、ワークショップや、個人レッスンなどを行われている。レッスンの生徒が増えるきっかけは、コンサートが多い。「あなたのパフォーマンスを観て感動しました」と、レッスンを申し込んで来る人は少なくないと言う。他にも、演奏を聴いていたイベントのオーガナイザーが「今度、自分のイベントで演奏をしてくれないか」と依頼しに来ることもある。言語や文化の違いはあれど、彼の魂の込もった津軽三味線を聴いて、強く動かされる人は大勢いる。
最近では、イギリスのサウスロンドンにあるパブで演奏を頼まれた。行ってみると、驚くべきことに他の演奏グループはほとんどロックバンドだった。あまりのジャンルや客層の違いに「自分たちの演奏は受け入れてもらえるのか」と不安になった一川さんたち。しかし、いざパフォーマンスを始めてみると、聴いたことのない音楽にどんどんと聴衆が集まって来た。そして最後には大勢の人が自分の呼びかけに応じて手拍子をしてくれる等、ライブは大成功に終わったと言う。文化の違いがあるからこそ、一川さんの演奏はより一層海外で輝くことができたのだ。
↑ダンサー・Jamie Gongさんとのコラボ。独特なダンスと切れの良い三味線の音色が絶妙なコンボだ。
後ろで倒れている大木も良い味出してるなぁ
- 伝統を忘れない。民謡に対する思い
最近ではDJやダンサーとのコラボなども行っている一川さんだが、モダンな音楽だけを扱っているわけではない。本来、三味線は伴奏楽器。最近では奏者がメインになって思いっきり演奏するスタイルが増えているが、もともとは民謡に合わせて伴奏を行うのが伝統的な三味線の役割だった。この役割を大事にしている師匠のもとで育った一川さんは、三味線の新しいスタイルを取り入れながらも、伝統は忘れない。ロックのように三味線をかき鳴らす曲目だけではなく、伴奏として民謡の伴奏をする曲目も演奏し続けている。
一川さんが何度も参加されてきたイベント「HYPER JAPAN」では、NARUTOのキャラクターに扮したコスプレイヤーたちが自分たちの演奏に乗って踊り出す。こんな光景は日本では見られない、と一川さんは言う。「日本では、三味線を使ったり民謡を披露したりすると、『古い』『ダサい』と思う若者が多い。だけど、海外ではそれは『新しいもの』『クールなもの』として見てくれる。」海外では、自分たちの演奏に老若男女が揃って盛り上がり、積極的に掛け声や手拍子に参加してくれる。「伝統的な民謡の良さを知って欲しい」という一川さんの強い思いは、確かに観客に伝わっているようだ。
- これからの活動
日本の音楽を海外に伝えていくために、一川さんは活動の場をどんどん広げている。その一つとして最近始動したのが、小学校や中学校で日本の伝統音楽を紹介する「学校訪問プロジェクト」だ。イギリスで演歌歌手として活躍する望月あかりさんと共に学校を周り、「日本の伝統音楽とは何か」を感じてもらう。
「これからはイギリスだけじゃなくて、国外でもどんどん演奏していきたい。」最近ではドイツのベルリンで三味線コミュニティーに呼ばれてワークショップを行ったり、チェコのプラハで行われる公演に呼ばれて演奏したりと、国外での演奏の機会も増えてきている。これから一川さんの三味線の演奏は、ヨーロッパ全体に響き渡っていくことだろう。
- 編集後記
コンサートやレッスンでお忙しい中、今回のインタビュー依頼を快諾してくださった一川さん。初インタビューで緊張している私に親しみやすくお話をしてくださる、大らかでとても魅力的な方だった。
後ろで倒れている大木も良い味出してるなぁ
- 伝統を忘れない。民謡に対する思い
最近ではDJやダンサーとのコラボなども行っている一川さんだが、モダンな音楽だけを扱っているわけではない。本来、三味線は伴奏楽器。最近では奏者がメインになって思いっきり演奏するスタイルが増えているが、もともとは民謡に合わせて伴奏を行うのが伝統的な三味線の役割だった。この役割を大事にしている師匠のもとで育った一川さんは、三味線の新しいスタイルを取り入れながらも、伝統は忘れない。ロックのように三味線をかき鳴らす曲目だけではなく、伴奏として民謡の伴奏をする曲目も演奏し続けている。
一川さんが何度も参加されてきたイベント「HYPER JAPAN」では、NARUTOのキャラクターに扮したコスプレイヤーたちが自分たちの演奏に乗って踊り出す。こんな光景は日本では見られない、と一川さんは言う。「日本では、三味線を使ったり民謡を披露したりすると、『古い』『ダサい』と思う若者が多い。だけど、海外ではそれは『新しいもの』『クールなもの』として見てくれる。」海外では、自分たちの演奏に老若男女が揃って盛り上がり、積極的に掛け声や手拍子に参加してくれる。「伝統的な民謡の良さを知って欲しい」という一川さんの強い思いは、確かに観客に伝わっているようだ。
- これからの活動
日本の音楽を海外に伝えていくために、一川さんは活動の場をどんどん広げている。その一つとして最近始動したのが、小学校や中学校で日本の伝統音楽を紹介する「学校訪問プロジェクト」だ。イギリスで演歌歌手として活躍する望月あかりさんと共に学校を周り、「日本の伝統音楽とは何か」を感じてもらう。
「これからはイギリスだけじゃなくて、国外でもどんどん演奏していきたい。」最近ではドイツのベルリンで三味線コミュニティーに呼ばれてワークショップを行ったり、チェコのプラハで行われる公演に呼ばれて演奏したりと、国外での演奏の機会も増えてきている。これから一川さんの三味線の演奏は、ヨーロッパ全体に響き渡っていくことだろう。
- 編集後記
コンサートやレッスンでお忙しい中、今回のインタビュー依頼を快諾してくださった一川さん。初インタビューで緊張している私に親しみやすくお話をしてくださる、大らかでとても魅力的な方だった。
↑2014年に、イギリスで特別な技術を持った300人しかとることができないExceptional Talent Visaを取得された。
横にある飾りはその記念に貰ったものだとか。国内でたった300人って、す、すごいな…
海外で働く上で必要な能力は何かを伺ったところ、一番に挙げられたのは「英語力の大切さ」だった。コンサートをするにしても、曲と曲の間に三味線の紹介をしたり、曲の紹介をしたりするなど、英語を喋ることは必須になる。曲間での喋りがなければ、演奏のみが続いて単調になり、オーディエンスも飽きてしまうからだ。
日本の良さを伝えると言っても、その内容を伝えるためのツールを上手く使えなければ意味がない。
どんな形で活動するにせよ、海外で何かをやるには大前提として「語学力」が必要になるということを感じた。
一川さん、本当にありがとうございました!
一川さんのWebサイトはこちら
→ http://www.hibikishamisen.com/
他WEBサイト「英国ニュースダイジェスト」での一川さんのインタビュー記事はこちら
→ http://www.news-digest.co.uk/news/columns/bridging-people/13251-2015-2-19.html
横にある飾りはその記念に貰ったものだとか。国内でたった300人って、す、すごいな…
海外で働く上で必要な能力は何かを伺ったところ、一番に挙げられたのは「英語力の大切さ」だった。コンサートをするにしても、曲と曲の間に三味線の紹介をしたり、曲の紹介をしたりするなど、英語を喋ることは必須になる。曲間での喋りがなければ、演奏のみが続いて単調になり、オーディエンスも飽きてしまうからだ。
日本の良さを伝えると言っても、その内容を伝えるためのツールを上手く使えなければ意味がない。
どんな形で活動するにせよ、海外で何かをやるには大前提として「語学力」が必要になるということを感じた。
一川さん、本当にありがとうございました!
一川さんのWebサイトはこちら
→ http://www.hibikishamisen.com/
他WEBサイト「英国ニュースダイジェスト」での一川さんのインタビュー記事はこちら
→ http://www.news-digest.co.uk/news/columns/bridging-people/13251-2015-2-19.html
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